言葉との感動的な出会い

新たに誰かと出会うときや紹介されるとき、自分はそのたびに相手から強い影響を受けてしまいます。それが人生の転機となることもあるのではないでしょうか。おそらく単純な人間なんでしょう。しかし、数々の偶然の出会いによって積み重ねられてきたこの数十年は、けっして悪いものではなかったと断定できます。

思うに、人と直接出会うことばかりが、出会いではないのです。時にはすばらしい書物や言葉が、自分の生き方に影響を与え、人生を変えることも多々あるでしょう。山崎方代はそんなひとりです。「放浪の歌人」あるいは「無用の達人」と称される山崎方代は、酒好きで旅に憧れ、放浪を愛してやまない人でした。最後まで定職を持たなかったことでも知られています。数少ない支援者の好意で雨風を凌ぐ生活をしていました。

たとえば次のような有名な歌があります。「こんなにも湯呑茶碗があたたかくしどろもどろに吾はおるなり」。湯呑み茶碗のぬくもりに、どうしていいかわからなくて、「しどろもどろ」になってしまうような純粋さ、素朴さが、彼にはあったわけです。それは、息が詰まるような現代社会の枠に閉じ込められた自分たちが失ったもののひとつではないでしょうか。

「手のひらに豆腐をのせていそいそといつもの角を曲がりて帰る」という歌もあります。自分はなんとか今のところ食べるものにも事欠くような生活をせずに済んでいます。それはとてもありがたいことですが、しかし一方で、豆腐を手に入れたときの「いそいそと」した喜びを知ることができないということでもあるのです。誤解してはいけないのですが、彼はひたすら受け身に生きていたわけではないのです。

「ゆくところ迄ゆく覚悟あり夜おそくけものの皮にしめりをくるる」という歌。これはいざとなれば、男として立てねばならないこともあるのだという覚悟をうたっています。放浪と漂泊、そして孤独。方代はおそらく、男性の秘密のひとつを明らかにした人ではないでしょうか。彼の遺した言葉は、自分の生き方に確実に大きな衝撃を与えたのです。その衝撃はまるで小骨のように自分の喉に刺さったまま、今もとることができないような感覚にも似ています。

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