最初の師との出会いの経験

小学校に入ってからの数年間というもの、自分はひどい問題児で知られていました。宿題もしないし、先生の話も聞かない、学校の指示も守らないという調子でしたから。決して悪ぶっていたわけではないのです。とにかく遊ぶのに夢中の毎日で、学校の勉強や規律にまったく関心が向かなかっただけなのです。

ですから、学校の成績は惨憺たるものでしたし、担任の評価は最低でした。小学校の成績は当時は「よい」「ふつう」「もう少し」の三段階評価だったのですが、なんと「よい」がひとつもなかったのを記憶しています。母親も、あなたの子どもとはとても一緒にやっていくことができません、なんて先生からいわれて、とっくにあきらめていたのでしょうか。さほど怒られることもありませんでした。

そんな自分にも転機が訪れるときが来ました。それまで自分は親の仕事の都合で小学校を転々としていたのですが、4年生になって間もなく小さな田舎町に引っ越すことになりました。そして、あまりに悲惨な成績を不安に思った両親が、転勤と転校をきっかけに自分を学習塾に通わせることにしたのです。学習塾といっても、計算プリントをちょこちょこ解いていくレベルのもので、高度なことを教えてくれるわけではありません。小学校の低学年のおさらいをするような補習塾という感じです。

その学習塾をはじめて訪れた自分を待ちかまえていたのは、まだ若い女性の講師でした。彼女は、自分に入塾の学力診断テストらしきものを用意していて、それを数枚解いたのを記憶しています。なにしろはじめての学習塾体験でしたから、あきらかに浮いた存在にとまどっていた自分は、それでも一生懸命取り組みました。とはいってもろくに半分も解けませんでした。

女性講師はテストの採点を終えたあと、自分の方をしばらく見つめました。そのとき彼女が自分に言ってくれた言葉は、一生忘れられません。彼女は自分のひどい答案をチェックしながら、次のように言いました。「計算がとっても得意なのね」と。自分はこの一言で天にも昇るような幸せな気持ちになったのです。この一言がきっかけで、その後も算数だけは勉強しようと思えるようになったのです。思えばこれが人生初めての師との出会いというものでした。

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