予期せぬ出会いの話
仕事の都合で、自分のランチはいつも遅い時間になります。ランチの時間をとっくにすぎているため、事務所の近くのスーパーで値引きシールの貼られたお惣菜を買うか、コンビニ弁当などで済ませてしまうことが多くなります。
ある日、普段通りにスーパーで残り少なくなった弁当を探しながら、ややうつむき加減で惣菜に手を伸ばしている女性の白い額に目がとまりました。もしかして!と胸がどきっとときめきました。
思い起こせばもう10年以上前のことになります。当時、自分は夜の街が徐々に明けてゆく風景を見るのが好きでした。そこで深夜に出かけては、夜明けを街の中で迎えるという日々を過ごしていたものです。アルコールをたしなむこともありましたが、町で出会う見知らぬ人や夜の女たちをただぼんやりと眺めたり、そこで知り合った何人かの人と朝まで語り合ったりするだけでも十分満足していたように思います。そんな夜の街のどこかにあった小さな公園で彼女と出会ったのです。
彼女はとある風俗店の人気嬢でした。年下の彼氏のために仕事を辞めようかどうしようかと悩んでいる様子でした。その晩、つい長い間話しこんだ自分と彼女は、それ以降時折メールをやりとりしたり、夜の街でバッタリ会ったときに少し話をする程度の、関係とも言えないような顔見知り程度の間柄でした。彼女自身、店を辞めたあとまた復帰したりといったことを繰り返しながら、結局、年下の彼とはうまくいかず別れたようです。その後、なんとなく私ともやりとりがなくなっていました。
そして、10年の月日が流れ、30代半ば近くに見える彼女に出会ったとき、その後ろには小さな女の子の姿がありました。私は手にとった弁当を棚に戻し、そっとスーパーを出ました。足取りは軽やかでした。おそらくこの予想もしていなかった10年ごしの出会いが、自分の少々くたびれた日常に明るい光を投げかけてくれたからに違いありません。もちろん、彼女にこの先声をかけることは、おそらくないだろうと思いますが・・・。
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